2021年夏新刊「碧い標」後書き

2021年6月6日発行『碧い標』、後書き兼備忘録です。
ネタバレもりもり且つ本編を読んだ前提で書いているので、全部読みきってからご覧いただけると幸いです。

書き始めたきっかけ

5.3メインストーリー中、エリディブスが塔を乗っ取って英雄を召喚しまくった影響で水晶公の腕にクリスタルがバキバキ侵食してきたシーン。ものすごく痛そうにしていたところを見て、「既にクリスタル化している右腕も、過去に無茶をした影響で侵食されたのではないか?」と考えたのが直接のきっかけです。
以前から、どうして水晶公と呼ばれるようになったのか、王になってほしいとまで言われるほどの経緯とは?と考えていたことが合体して、こんなお話になりました。

シェッサミールさんとお話しすると、「公は街の安全に心を砕いていた」という意味のことを聞けるので、恐らくこのあたりの理由で昔、塔の力を引き出す事件があったのでしょう。となれば、罪喰いの襲撃が妥当かな、と。

ちなみに、ユールモアとの関係は少し前までは罪喰いを相手取って戦う同志だったらしいので、本格的に拗れて対立してしまったのはヴァウスリーが元首になってからだと仮定しています。つまり、対ユールモア……対人戦で彼は塔の力を振るうことは、まあないのではないかと考えていました。

オリジナルキャラについて

たくさん出してしまったので、モデルがいる二人に絞ってご紹介させてください。

ルネ

レイクランド連邦の騎士。エルフ族。妻と娘がいたが連邦崩壊の内乱で亡くしてしまう。甘いものが好き。
「ルネ」と「彼」は共に未来を目指す仲間であり、剣の師弟であり、盟友であるようにという思いで描写しました。お気付きかと思いますが、モデルはオルシュファンです。名前は単純に響きがイイからというだけで決めました。
彼に関しては張ってない伏線、というかモデルへのリスペクトをしてしまったのですが……本書でルネは彼に見せるつもりのない手記を残します。彼を慮り、いつか現れる待ち人へ思いを馳せる。これ、蒼天秘話でオルシュファンは届ける気のない手紙を書いているのと同じ気持ちなのかな、と書き終わった今、振り返って思いました。

イヴ

光耀教の司祭。ヴィース族。
実は水晶公がモデルです。まだ年若い「彼」が初めから威厳のある人を演じることは難しいのでは?と思い、イヴの口調や人を導く司祭としての姿を彼が真似して、初期の水晶公として振る舞っているということにして書いていました。(ちなみに、バルデシオンさんもお手本にしているつもりでした)
彼女の名前はそのまま、最初のヒトの女性の名前から。彼女は後に夜の民と呼ばれる一団に加わる前提で登場してもらったので、そのまま特にひねらずに名前を拝借しました。
あと、彼女とその師を書いた理由は他にもあるので後述します。

光耀教について

作中では、ノルヴラントで広く信仰されていたものの、光の氾濫をきっかけに衰退したとされていました。
同時に、夜の民の起源も光の氾濫以降だと言及があります。彼が第一世界に渡ったのが光の氾濫から十年以内ということなので、恐らく光耀教の衰退が始まった頃と想定して、信仰を含めた文化の移り変わりを描く題材としました。

ディアミドとイヴの関係は、長く広く信仰されているものが時代の流れによって変わっていく描写にリンクしています。途中罪喰いによって倒れるディアミドには光耀教の衰退を象徴してもらいました。
対して、師の死を経て自分の足で立つことと時代の変化の中で感じる自らの信仰の限界、そして進化はイヴに担ってもらいました。
激しい環境の変化の中で衰退するものがあれば、新しく芽を出すものもある。夜の民の旅立ちを描けたのは本当に良かったと思っています。

夜の民の信仰は武力以外の方法で世界と向き合い、戦い続ける人たちに寄り添う想いであり願い、祈り。奇しくも5.5のトレーラーで「剣を執り、斬り結ぶだけが誰かのための戦いなのか」という言葉が出てきましたが、戦場は違えど彼らも己の大事なもののために己の戦場で戦っていたのだということを根底に書いていました。

今回の作業用BGM集

基本的に「shadowbringers」のフルトレーラーを流しつつ、手が止まりかけたら書いている場面に合わせて曲を切り替えていました。
特に苦手な会話メインのところは「ワッツハンマーガレージ」、バトルシーンは「イニシエノウタ」がなかったら書ききれなかったです。どれも素敵な曲なので、機会があればぜひ聴いてみてください。

FF14

  • shadowbringers
  • 悠久の風〜漆黒〜
  • ロングフォール
  • 世界を照らす闇〜クリスタリウム・昼〜
  • 知恵は眠らず〜クリスタリウム・夜〜
  • 驚嘆の真実
  • Heavensword
  • ワッツハンマーガレージ

ニーア・オートマタ

  • イニシエノウタ/贖罪
  • 還ラナイ声/ギター

ヒトリエ

  • イヴステッパー
  • November

総括

はじめて長編を書ききることが出来ました。正直、描写不足なところや書き足りていないところがあるように思います。特にオリジナルキャラを出したはいいものの上手く活かしきれていないキャラがいて、そこは今後の課題ということにしたいです。

ただ、主軸とした「彼が水晶公となるまで」という部分を6.0が来る前に書き上げられたことが本当に嬉しく、安心しています。5.0で水晶公に惚れ込み、本を出すに至り、今回一つの区切りを迎えられたことがこんなにも嬉しい。
これから水晶公を経た彼が光の戦士とどんな冒険を繰り広げていくのか、今から楽しみで仕方ありません。

拙作のみならず、ここまで読んでくださった方に最大級の感謝を。本当にありがとうございます。

2021年6月
村崎 玄