2022年冬新刊3冊覚書

2022年1月29日開催の頭割り番外編に合わせて、再録集を3冊同時発行しました。今思い返しても正月休みを丸々潰したあの熱量は謎ですが、良いものが出来たのではないかと思いますので全て良しとします。

市井の人々 citizens who thinking about him

クリスタリウムの人々シリーズという名前で不定期連載していたものの再録集です。漆黒前になんとか完結させるという意気込みで書き上げた思い出。本作は3つのこだわりポイントに分けて記録します。

こだわりポイント:表紙

デザインについて、主人公がクリスタリウムの雑貨屋さんという完全なるモブなので、目立たない装丁を目指しました。また、店長さんが丁寧な口調の人なのでフォントも明朝体で統一し、スマートさを演出。涙もろいところはタイトルに使用している「幻ノにじみ明朝」というじわっと滲んだ書体で表現しました。大変きれいなフォントなのでお気に入りの一つです。
メインビジュアルの海ですが、これは店長さんからお客様を見た時の印象というつもりで選定しています。夜を連れてきた、闇の戦士様──お客様は同時に朝焼けも連れ戻してくれたのでした。

こだわりポイント:遊び紙

これ!!!!これが!!!!!やりたかった!!!!!
トレーシングペーパーといううっすら奥が見える薄い紙を使用したのですが、もう、大成功です。イメージとしては、正体を知ることはないお客様を見守る店長さんの視界という感じで、「あなたのことをくっきり知ることはないだろうけど、それでも私は/私たちはいつでもここにいてあなたを待っています」という思いを込めました。水晶公とお客様を見守る、がテーマのシリーズだったので遊び紙でもそこを表現出来てよかったです。

こだわりポイント:章タイトル

日本語と英語の2パターンを扉に置いています。上下に配置したかったので、短編集とは扉の配置や組版の形式を変えました。結果的に本を通読した時にゆったりとした印象があり、これはこれでよかったなぁと思いました。
ちなみに英語のタイトルはpixivに投稿した際の表紙に書いてあるものと同じです。めちゃくちゃな意訳ですがかなりお気に入りです。

しじまにふれる第二集

どうせイベントが暁月開始後なら漆黒期間中に書いた短編再録も出そうと思い立って作り始めたものの、あまりに数が多すぎて分冊することになった経緯があります。半分くらいが水晶公、もしくはグ・ラハのお話だったので自分がいかに彼に狂わされているかがよく分かります。どんなに頑張っても分冊した両方に気の迷いで書いた成人指定のお話が入ることが分かり、人生初の18禁本が2冊同時刊行になったというオチ付きです。

さて、もう一冊の短編集がいろいろごった煮なのに対して、こちらは公と新人くんが中心となったお話だけで固めています。構成としては「公(本編前〜5.0〜5.3終了まで)→新人くん(5.3以降〜6.0開幕直前)」という時系列で概ね並べています。書いた順ではないので文体が少しずつ違って、書いた本人としては面白い気付きでした。

並び順でもう一つこだわったところ。絶対に「街道を行く」で締めると決めていたので、実現出来てよかったです。ありがたいことに好きだと言っていただける機会が多い本作は、水晶公という人に対する気持ちの整頓のつもりで書きました。正直、グ・ラハ・ティアという男に関してはまだ整理がついていないのですが、水晶公という一つの在り方に対しての答えを形作れたのは自分にとって大きな区切りとなったかと思います。

表紙について。光の反射する水面は水晶公とグ・ラハが見ていた世界、それと自機の印象です。キラキラしていて、でも明るいだけじゃなくて隠したり見せたくない面も持っている。フォントは繊細な明朝体で揃え、成人指定の文字も内容に合わせてしっとりあっさりとした手書き風のものを選びました。(実はフォント選びが一番時間のかかったポイントだったりします)

しじまにふれる第三集

こちらは暁からジョブクエNPCから古代からイマジナリーまで、なんでもかんでも突っ込んでいます。一応、ある程度傾向と時系列によって並べてはいました(オルシュファン→暁→他NPC→エメトセルク→古代)。こだわったのは出だしの順番です。オルシュファンで始めるというのは決めていました。いい人だな、この人の助けになりたいな、という気持ちが表に出ている話の後にフレイくんの「明滅」を置く。この流れがやりたかった。

表紙について。収録している話の傾向として結構しんみりしているものが多かったというのと、漆黒のあたりから話を書いている時になんとなく深みに潜っていくような感覚があったので、水の中の写真を選びました。一回やってみたかった、全面に写真をドン!文字をそっ!という感じ(?)のデザインが出来て大変満足です。フォントは第二集と同じく、癖の少ない明朝体(自作の印象として細めのゴシック体というよりは明朝体の方が向いているかな、と思っていたので)

ちなみに遊び紙は第二集、第三集共に一番最初に出した本と同じハンマートーンの藍色を選びました。もしお手元に最初の本がある方はぜひ見てみてくださいね。