星は願う

「もし年に一度しか会えないことになったら、どうする?」

溜まりに溜まった資料と借り溜めた本の整理を手伝ってくれている英雄がふと問うてくる。その手には子ども向けの占星術入門書が取られていた。

空を彩る星座を描いた表紙を見て、ある物語を思い出す。確かひんがしの国に伝わる星の神話だったか。星の大河の此方と彼方とに分かたれた恋人が年に一度だけ逢瀬を許されるという。

どうするもこうするも。たった一人の冒険者として気の向くまま旅をするこの人と、バルデシオン委員会の再建に走り回るオレ。たまに会えば仕事の話ばかりで、ただのオレたちとして話せる時間なんて微々たるものだ。だから今だって似たような状況なのにまるで他人事のように言うあの人がおかしくて、思わずぷっと吹き出してしまった。答えを得られず、しかも笑われて怪訝な顔をしている彼方の英雄に笑いかける。
「会えない間、ずっとあんたを想い続けるよ。何を話そうか、どんな時間を過ごそうかってな」
「そう」

オレの答えに満足したのか、あの人は手に取っていた入門書を本棚に差し入れて、次の本の山に目を向けた。負けず嫌いな英雄殿のために、横顔が普段より淡く色づいて見えたことは気付いていないことにしよう。