プロローグ

絢爛豪華なクリスタルで形づくられたシルクスの塔の中でも特に豪奢な広間には、かつて圧倒的な力で以て世界を治めたアラグ帝国始皇帝ザンデの玉座が据えられている。美しい広間のあちこちには焦げ跡が残っており、激しい戦闘があったことが伺い知れた。この場で戦闘があったことなんて、オレの知る限り二回だけだ。どちらの場面か、あるいはどちらの世界での出来事かを教えるように、杖を手に前を見据える魔道士の立像が佇んでいた。
「……水晶公」

ここはあの人の、光の戦士の記憶の淵だ。