星飼いの寝言

まぶたの裏には星空が住んでいる。

はじめての野営を敷いた自分を見下ろしていたサゴリー砂漠の空。雪風の合間に方角を報せてくれた星の門。悔しさを噛み締めて見上げた空に輝く導きの星々。偉大な魔道士たちが説いた世界の理。宙の果てを目指して駆けた星の合間。

旅の間、目に飛び込んできた星々のまたたきがまぶたの裏でずっと歌っていた。一人旅の間も、仲間たちや一時の道連れと一緒にいる時もずっと響き続けるそれは眠れない夜の、あるいは眠ってはいけない夜、あたたかい毛布のように寄り添ってくれる。

もぞり。控えめな身じろぎを感じた。薄くまぶたを押し上げると、向かい合って横になっているグ・ラハの肩から掛け布団代わりの上着がずれ落ちかけている。彼が眠りに落ちる前に捕まえられた手をそうっと逃げ出させて、冷えないように首元まで上着をかけ直した。たった一呼吸の間に出来ることなのに何とも言い難い満足感が胸を浸していく。とても堪えられないむず痒さを薄めるために、今度は自ら彼の手を取って頬を擦り寄せた。

ふ、と彼のまぶたが震える。二度、三度と揺れた睫毛の奥から煌星が垣間見えた。起こしてごめんね、ともう一度だけ手に頬を寄せると少しかさついた手の甲が撫でてくれる。心地良いあたたかさに誘われて、また眠気が強くなってきた。きっと次に目を覚ます時は朝になっていて、そしてまた彼と新しい星空を見るのだろう。

まぶたの裏には星空が住んでいる。一等輝く星は紅い色をしていた。